好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
いっくんの淡々とした態度に、さっきの男子は追ってくることはしなかった。
繋がれた手に力を込める。
「あの、いっくん……」
「くるちゃん、すごく人気者だね。ダンスすごかったよ」
一瞬だけ振り向いて笑顔を見せてくれる。
胸がぎゅっと締め付けられるような感覚になり、自分のカッターシャツをぎゅっと握った。
「ずっとくるちゃんを見てたよ。がんばったんだね。キラキラしてた」
「いっくん……っ」
「なんだか最近はくるちゃんと距離ができている気がしてたけど、そのヘアクリップ見てうれしくなった」
「……ん」
「いちばん、くるちゃんがかわいかったよ。くるちゃんしか見てなかった」
今度は足を止めたいっくん。
わたしに振り返り、泣きたくなるほど優しい瞳で笑った。
我慢できなくて、こらえていた涙が頬を伝う。
……好き。
いっくんが好き。
大好きなの……。
「くるちゃん」
優しくわたしの頭を撫でてくれるいっくんに涙が止まらなくなる。