好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「なんでどっか行ってたんだよ」
「…………」
「動くなって言ったよな?」
……怒ってる。
廉がここまで怒っているのはめずらしい。
イライラしてても、そこまでわたしに対してきつく言うことはなかった。
たぶん、いままで廉と一緒にいて、いまがいちばん怒ってる。
「なんで樹といるんだよ」
「…………」
「そんなに、樹がいいかよ……」
怒ってるかと思えば急に弱々しくなる声に、ゆっくりと顔を上げる。
廉は真剣な表情でわたしを見ている。
その瞳は揺れていた。
「胡桃はいつもいつも……」
「……廉だって、女子に囲まれてわたしをひとりぼっちにさせたじゃん」
「は?」
「待ってたのに、廉は女子に囲まれてベタベタ触られてたじゃん!」
「なにそれ?」
「見てたもん!」
キッと廉を睨むと、廉は眉間にしわを寄せる。
「あー、あれか?人が多くて動けなかった。混んでたんだよ」
……本気で言ってるの?
「かわいい子いっぱいに囲まれてた」
「見てねぇから知らん」
「そんなこと……」
「俺はいつも胡桃しか見てねぇよ」
「っ……」