好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
漆黒の瞳に吸い込まれそうになり、心臓がおかしくなって視線を逸らす。
だけどすぐに、ほっぺを廉の両手が挟んで無理やり視線を合わせられる。
「逸らすな」
「っ、」
「それで、なんで胡桃は動いたんだよ」
「……廉が遅いと思ったら女子に囲まれてたから」
「はぁ?それは混んでただけだろ」
ばかじゃん。
全然気づいてないとか、最大級のばかじゃん。
話しかけられてたでしょ。
触られてたでしょ。
それなのに、冗談とか誤魔化しじゃなくて本気で言う廉は鈍感すぎだよ。
「それでむかついて、歩いてたら知らない男子の先輩グループに声かけられて」
「あ?」
「……それをいっくんが助けてくれた」
「チッ」
思いきり舌打ちをする廉は怖い。
ここまで怒りをわたしに対して表に出してくるのはやっぱり初めてだ。
「なに、樹に告白でもしたわけ?キス、した?」
「…………できなかった」
「…………」
「告白、できなかった。でも、気持ちがあふれて奪おうと思った。けどそれも、できなかった……」
自分で言って涙があふれる。