好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
こんなにいっくんのことが大好きなのに、結局気持ちを伝えられなかった。
ただの弱虫だ。
伝えるのが怖かった。
それでも、気持ちがあふれて限界になって、無理やりにでもキスしようと思った。
だけど、それもできなかった。
あと1センチもなかった。
少しでも動けば当たってしまう距離にいた。
でもその距離が遠かった。
わたしにはできなかった。
いっくんのことが大好きだけど、傷つけたいわけじゃないから。
無理やりキスしたところでいっくんがわたしのこと好きにならないってわかってたから。
「わたし、なんにもできなかった……」
涙が止まらない。
ボロボロと大粒の雫ばかり落ちていく。
「うっ……ふぇ……っ…」
廉の顔も見えなくなる。
くるしい。胸が痛い。
わたしはただ、いっくんのことが好きなだけなのに……。
「んっ……」
嗚咽をもらすわたしの声は、なにかによって塞がれた。
やわらかくて、温かい。
それに、すごく近くに感じる気配。
驚いて目を見開いた。