好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
数回瞬きを繰り返し、視界をクリアにする。
びっくりして涙は一瞬で止まった。
「っ、」
ゆっくりと温もりが離れていく。
そのときに見えたのは、廉の伏し目がちな顔。
距離があき、廉の顔がしっかり見えると視線が絡まる。
「い、いま……」
「よかった」
「え……」
「胡桃が樹とキスしてるように見えて、目の前が真っ暗になった」
ふっと悲し気に微笑む廉に、思考が支配される。
頭の中は廉でいっぱいだ。
「さすがに焦ったけど、してなくてよかった。俺がいちばんに、胡桃を奪いたかったから」
「な、にを言ってるの……」
戸惑うわたしの唇を廉の親指がそっとなぞる。
さっきの感触を思い出して、顔が熱くなる。
やっぱり、さっきのは……。
「胡桃はいろいろ考えたんだろうな。でも、俺はそれ以上に、胡桃をほかのやつに触らせたくない」
「れ、ん……?」
「胡桃はだれにも渡さない」
「ちょ、廉……」
「俺だって限界だから。もう待ってやんない」
「え、ちょっと。離して。やっ……んん、」