好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
◆早く俺を好きになれ
―廉Side―
……やっちまった。
我慢できなかった。
顔を見ることも見せることもできなくて、ただ胡桃を強く抱きしめる。
胡桃が樹しか見ていないのはわかってたことだ。
だけど、さすがに限界だった。
飲み物を買って戻ると、胡桃がいなくなっていて焦った。
必死に探してやっと見つけたと思えば、ふたりがキス、しているように見えて……。
まるで鈍器で頭を殴られたかのような衝撃で、目の前が真っ暗になった。
そこからはもうほとんど無意識で、胡桃を引っ張ってだれもいない教室に入った。
キスはしていなかったみたいだけど、俺の頭はそれだけでは納得できない。
胡桃がしようと思った。
俺以外の男が胡桃に触れる。
そう考えるだけで我慢の限界だった。
胡桃のことを知っているのは俺だけでいい。
俺が、いちばん胡桃のことを知っていないといけないんだ。
俺の知らない胡桃がいることは許せない。