好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



心底ホッとすると同時に、またしたくなる。


胡桃の……すげぇやわらかくて甘かったから。

しないけど。


さっきは胡桃も感情がぐっちゃぐちゃだったからなんとなく流してるけど、いましたらぜってぇ嫌われる。

元々、俺のことよく「嫌い」って言ってきたし。


あれ、なんか俺かわいそうだな。


まぁそんなことどうでもいいけど。

嘆く暇があれば、胡桃のことを考えてるほうがよっぽどいい。



「行くぞ」

「……うん」


胡桃はしぶしぶといった感じで頷く。

ここで、引かないことがわかってるからだろう。


さすが幼なじみ。
いちばん長く一緒にいただけある。


でも、俺はさっき、その幼なじみとして保たれていた関係を崩した。


胡桃はなにを思ったんだろうか。


怖くて、返事は聞けなかった。

ただ胡桃が一緒にいることを許してくれていることに安心して、いまはそれ以外はどうでもよくなった。







< 196 / 347 >

この作品をシェア

pagetop