好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「挨拶は“おはよう”だろ」
「……うるさいなぁ。それなら“はよ”も違う」
「ん、よりはマシだよ」
「ほんとうるさい」
目は合わせないけど、テンポよく返してくれるようになった。
そんだけでにやけそうになる。
俺ってけっこう単純なやつだ。
「朝から元気だね。おはよう、くるちゃん」
「いっくん、おはよう」
樹が出てくると、胡桃はすぐに樹に近寄る。
俺と距離をとるように、回り込む胡桃にむっとした。
しかも、樹には普通に挨拶するし。
いつものことって言えばそうなんだけど。
俺が胡桃の隣に移動しようとすればまた反対側に行き、ぜったいに俺が隣になることを避ける。
「く、くるちゃん?」
「なぁに?」
樹もさすがに気になったみたいだけど、胡桃は笑顔を貼り付けている。
俺も意地になって胡桃の隣に移動するも、しぶとく胡桃も俺の隣を避けた。
樹の周りをくるくる回って、あほみたいでもこっちは真剣だ。