好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



「胡桃」

「っ……」


俺の声に肩をピクっと上げる。

目は合わせてくれないけど話もするし、同じ空間にいることは許してくれる。


だけど、俺が胡桃のすぐそばにいくことは許さない。



「なぁ……」

「かほちん!おはよう!!いっくん、わたし行くね」

「あ、うん……」


走って樹から離れる胡桃はよっぽど俺が近くにいることのほうが嫌らしい。

いままでなら、胡桃の友達がいても挨拶だけで樹の隣から離れなかった。


こうなったのも文化祭の日からだ。



「……ずっと言わないでいたんだけど」


胡桃の遠くなっていく背中を見つめていると樹がぽつりと話し出す。



「くるちゃんに何したの?」

「……べつに」

「べつにって……またくるちゃんにいじわるしたの?あんなくるちゃん初めてじゃん」

「…………」

「廉はほんと不器用だよね。今回は特に長いし」

「うっせぇよ」


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