好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「は?意味わかんね。だれが作ったかわかんねぇもん食えるか」
「え……?」
「胡桃のが安心して食えるわ」
「なんでわたしのって……」
「料理下手じゃん。すぐわかるわ」
「いい!食べるな!」
「腹減ってんだよ」
「だからほかの……」
「もう無理。食べる」
カップケーキになれなかった失敗作が、廉によってなくなってしまう。
どうして。
どうして……。
「ん。まずいな」
「ばっかじゃないの!?」
「でも、うまいよ」
「……意味わかんない」
ぜんぶ食べちゃった。
廉ってたまに意味わかんない行動をとる。
むかつく。
だけど、なんか落ち着いた。
「お腹壊しても知らないからね」
「残念ながら胡桃が作ったやつにそんな効果ねぇよ」
手を合わせて『ごちそうさま』をする廉を見ていると胸のズキズキは少しだけおさまっていた。