好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
いちいち樹に説明なんてするわけないだろ。
俺がなにかしたこと、前提なのもむかつくし。
「幼いころから、廉はくるちゃんにいじわるして怒らせてばかりだもんね」
「昔話なんてする気ねぇよ」
「はいはい。でも、ほんと早く素直になりなよ。くるちゃん、文化祭のダンスから2年の間でもすごい人気だよ」
「…………」
そのことは気づいてる。
胡桃に向けられる視線が増えた。
いままで俺が他の男を胡桃に近づけないようにしてきた。
常にそばにいることで、俺がいちばん近い男なんだと周りに見せつけた。
だけど、いまはそれだけじゃ諦めなさそうなやつらもいる。
ほんと迷惑。
胡桃も胡桃で、だれにでも笑顔振りまいて猫かぶってるし。
単純なやつはそれで勘違いすんだろ。
まじで胡桃はあほだ。
歩く足を速めて樹を抜かしそのまま前を行く。
兄弟で登校とか無理だから。
本当なら胡桃がいても樹と一緒は無理だけど、胡桃がいるから仕方なくだ。