好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「あれは照れてたんだな。廉、めっちゃ意識されてるぞ」
「……それはわかってる」
「え?」
「なんでもねぇよ。でも、お前は胡桃を見んな」
「なんでだよ!」
凛太郎のツッコミが飛んでくるけど、気にせずに今度こそ自席に行った。
……胡桃が俺を意識してることはわかってる。
いい意味か、悪い意味かまではわからない。
話してくれるあたり悪い意味ではないと思うけど。
胡桃は俺のことを意識して物理的距離をとっている。
そんな胡桃の顔を凛太郎やほかの男が見ることに納得はできないけど、俺を意識して俺だけに見られないようにしてるってのは少しだけ悪くない。
胡桃が俺のことを意識していることはいいこと。
樹といることよりも、俺と距離をとることを優先している。
前の胡桃なら俺から離れたい気持ちよりも、樹と一緒にいたい気持ちが勝っていた。
それがいまは樹といたい気持ちより、俺と距離をとりたい気持ちが勝っている。