好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
理由はどうであれ、樹への気持ちだけで行動を決めていた胡桃が、俺を視野に入れて俺への気持ちで行動を決めた。
それだけで俺にとってはすげぇ進歩で、ずっと、何年も待ちわびていたことなんだ。
いまはそれでいい。
俺を意識するだけでいい。
無関心がなによりもよくない。
『嫌い』だとしても俺に対して、確かな感情があればいいんだ。
意識さえしてくれれば、俺を見てくれれば、そっからはどうだってできるだろ。
胡桃のほうに視線をやれば、一緒に登校した友達と話している。
にこにこと花でも飛ばしてんのかってほどの表情で笑ってるし。
学校でそんな顔すんな。
周りをもっと見ろよ。
他のやつらに見られてんだよ。
胡桃の笑顔は簡単に見られていいもんじゃねんだよ。
むかむかが奥底のほうから上がってくる。
それをなんとか抑え込んで、ホームルームが始まるのを待った。