好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
体育委員だからか凛太郎は引いてくれない。
だけど、俺だって無理だわ。
胡桃が他の男とペアになるとか普通に無理だわ。
「胡桃、違うのにしろよ」
俺が出れないなら胡桃が出ないようにするしかない。
なのに胡桃はすでに名前を書いている。
自分の名前と、そこのメガネの名前。鈴木ってのか。
「わたし足遅いからこれくらいしか出れないの」
「運動苦手な人は障害物競争にいくんだよ。二人三脚とか風船割りとか、足の速さ関係ないから」
「…………は?」
二人三脚?
ぜってぇ無理なんだけど。
凛太郎を睨めば、片方だけ唇の端を上げた。
わざとだな。
いま、わざと情報出した。
「でも、これに関してはさっきちゃんと説明したんだけど。聞いてない廉くんが悪いよ?」
「聞きたいと思うように話せないのが悪い」
「うわっ!そんなこと言うなんてひどい!理不尽!廉くんなんて嫌いよっ」
「胡桃はほかにねぇの?」
「無視かい!」