好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
危ないだけだろ。
どっちも運動神経悪いやつじゃなくて、どっちかは合わせられるほうがいいんだって。
だから、胡桃には俺がいいんだって。
全校生徒がグランドに集まり、本番の流れで競技を行う。
ついに来た。
胡桃が出る障害物競走。
メガネと並んで入場。
「廉、顔怖いぞ」
「だれのせいだよ」
「あ、はい、そうでした……」
茶化そうとする凛太郎に視線も向けない。
スタートラインに立つ胡桃を見る。
1走らしい。
足につけるバンドがバトンになるらしく、足をくっつけている。
……距離が近い。
メガネが長ジャージだからまだよかったけど。
胡桃の肌に触れるとかありえねぇから。
胡桃も長ジャージ履けよ。
むかむかしたまま、リハーサルのため幼稚園のかけっこかのように「よーいどん」の言葉でスタートする。
おい、メガネ。
歩幅ちげぇよ。
もっと胡桃に合わせろ。
歩くリズムも違うんだよ。
肩は触んな。
胡桃の顔見てんな。
前見てろよ。