好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
固定されてるから、ひねりながら転んでた。
見えてんだよ。
わかんだよ。
「でも……恥ずかしい……」
「知るか」
「うぅ……」
小さくうめきながら俺の首に手を回して、顔を埋めた。
は?
かわいすぎねぇか。
それはやばいだろ。
恥ずかしがって首に手を回すとかなに?
やっぱりあざといな。
そういうの、ほかのやつにはすんなよ。
「胡桃ちゃん、大丈夫かな」
「廉がついてるから大丈夫だよ。廉はかっこいいな」
待機してる列から聞こえてきた声。
視線をやれば、樹と彼女。
カップルで参加かよ。
樹は運動神経悪くねぇのに出てんじゃん。
「姫野さんきたよ。外の足からね」
「あ、うん。がんばる」
少し足を速める。
視線を下げると胡桃は俺の肩越しにあいつらを見ていた。
首に回された手に力がこもるのがわかった。