好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「……付き合ってねぇよ」
「…………」
「樹とあいつ。まだ付き合ってない」
時間の問題だろうけどな、と後付けする廉は優しくない。
でも、そうなんだ。
じゃあまだチャンスはある。
いっくんに好きになってもらうチャンスはあるはずだ。
「……そう」
「でも、樹はあいつのことがす……」
「廉」
まったく知らなかったからショックで泣いちゃったけど、それで折れるような気持ちじゃない。
確信的な言葉を口にしようとした廉を呼んで止める。
まだわたしの手を掴んでいる廉と至近距離で目が合っていて、お互いに逸らさない。
「また、料理食べてね。いっぱい練習するから」
「……ころす気?」
「ぜったい負けない」
まずは大きく差を見せつけられた料理をがんばる。
ほかにも、もっと美容に気をつかおう。
スキンケアもヘアケアも見直す。
仕草も言葉使いも細かく意識する。
わたしの好きな人は、知らないうちにわたし以外の女の子を見ていたみたい。
でも、関係ない。
最終的にわたしを選んでもらえたらいいだけなんだから。