好きな人には好きになってもらいたいじゃん。


昨日だって、思いきり泣いた。

もうわたしの中は本当にぐちゃぐちゃだった。


でも不思議なんだけどね、泣いた理由が実は、いっくんと姫野先輩を見たからってわけでもなかったんだ。


あのとき泣いたのは、廉が……。



「胡桃」


もう一度、名前を呼ばれてゆっくりと廉を見る。

真剣な表情をしている廉は、漆黒の瞳にわたしだけを映す。


心臓がおかしい。
わたしがおかしい。



「胡桃はさ、」

「、ん」

「……胡桃には、俺だけ見てほしい」

「…………」

「……今日だけでいい。あいつじゃなくて、俺を応援して」


おかしい。

廉もおかしいよ。


でも、やっぱりそれ以上にいちばんわたしがおかしい。

どうして、こんなにドキドキうるさいのかわかんない。


いつからだっけ。

こんなに廉に乱されるようになったのは。

廉のことばかり考えるようになっていたのは。



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