好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「かほちん、お疲れ!」
「くるたんありがとう!声聞こえたよ」
「ピースうれしかった。余裕だね」
「まぁね。決勝も見といてよ」
「いちばん応援する!」
「うーん、2番でいいよ」
「え?」
「後ろ」
苦笑いのかほちんの視線をたどって振り返る。
そこには、涼しい顔をした廉がいた。
その隣には町田くんもいる。
「お、お疲れ」
「……おう」
なんとか声をかけるも、廉はポケットに手を突っ込んで表情を変えない。
「岸本って速いんだな」
「そうなの。走るだけなら得意」
「オレも」
「町田も速かったけど、折原の余裕さよ」
「廉はまじで速いから」
かほちんと町田くんがわいわい話しているけど、わたしは廉と向かい合って無言。
もう廉に変な態度をとるのはやめようと思ったのに、なかなか難しい。
「昼は?」
「弁当がある」
「教室?」
「うん」
「行くか」
「かほちんと……」
「あたし学食だから、あとで来てよ」
「オレも学食。席とっとくな」
かほちんと教室に行こうと思えば、その願いは叶わなかった。
これは流れで、わたしと廉が一緒に教室に戻る感じ。