好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
町田くんも立ち上がり廉に声をかけた。
みんな忙しいな。
「胡桃をテントに送ってから」
「え、いいよ。ひとりで大丈夫だから」
「は?」
「ゆっくり戻るし」
「は?」
「れ、廉……?」
怖いんですけど。
眉間にしわ寄ってる。
声も低すぎ。
今日は優しいと思ってたのに、そうでもなかった。
「ひとりにできるか」
「でも……」
「文化祭のとき、絡まれたの忘れたんか」
「わ、すれてたよ。そんなこと」
特に記憶に残るほどでもない。
それなのに、眉間に寄せたしわを深める廉。
「忘れんなよ、ばーか。行くぞ」
「廉は乱暴だなぁ。もっと優しくしてあげないと」
「お前は黙ってろ」
「はいはい。先行ってるな」
町田くんはふっと笑って歩いていく。
いつもは騒がしくて廉に冷たくされてる町田くんだけど、いまは町田くんのほうが大人に見えた。
「なんで凛太郎見てんの」
「町田くんって大人な一面もあるんだなって」
「あ?」