好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
◇譲りたくない気持ち
お肌の調子がいい。
髪の毛もトリートメントを変えて前よりサラサラになった。
体型も綺麗に見えるベストを保ち続けている。
仕草も女の子らしさを常に意識してる。
……それなのに、どうしていっくんはなにも変わらないの?
一緒に登校したときもいつも通り。
優しい笑顔で、昨日見たテレビの話をしていた。
わたしの努力はまだ足りないですか?
時間は流れていくのに、関係はなにひとつ変わらないまま……。
「これやる」
「なんで?」
「頬こけてんぞ。ちゃんと食え」
「はぁ!?……ん-ん、あー……ありがとう、廉。気持ちだけもらっとくね」
まだ2限終わりだというのに、わたしの席に来てジャムパンを渡される。
廉の失礼な物言いに思わず女の子らしくない声を出してしまった。
ずっと意識してたらそれが素になるかもしれないし。
廉に対してかわいい女の子っぽくできたら、それはもう完璧だと思う。
でもなかなかに廉は手ごわい。
わたしをいらつかせる天才だ。