好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
実感する。
ふたりが並んでいると、痛いほど実感する。
昨日もね、思ったんだ。
いっくん、幸せそうだなって。
好きな人の隣だと、いっくんはあんな表情をするんだなって。
胸がキリッと痛んだけど、不思議とすんなり受け入れられた自分がいた。
それが少し……寂しかった。
目を逸らしたいはずなのに、案外見れてしまった。
いまも、胸が痛くなるけど目を逸らさずに見れるんだ。
おかしいね。
ずっといっくんなはずなのに、おかしいんだよ。
障害物競争が終わり、つぎは職員とPTAの競技。
そのつぎに、廉が出る騎馬戦だ。
その前に、お手洗い行っておこう。
ゆっくりと立ち上がって、お手洗いに行く。
ささっと髪も直して、テントに向かって歩いていたとき。
「くるちゃん」
後ろから名前を呼ばれた。
わたしをこう呼ぶのはひとりだけ。
後ろ姿だけでわたしと気づいてくれるところはさすが幼なじみだよね。