好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



なんでいっくんがそんな表情をするんだろう。

わたしのほうが、ぜったいにくるしいのに。


いっくんは幸せになっているのに。



「…………ついに、か……」

「え?」

「ううん。こっちの話。そろそろ騎馬戦はじまるよ」

「あ、応援しないと」

「一緒に行こう」

「うん」


いつもの優しい笑顔に戻ったいっくん。

やっぱりさっきのは見間違いだったのかもしれない。

それか、わたしが思わず手を振り払ったから嫌な気持ちにさせちゃったのかもしれない。


モヤッとした気持ちをおさえようと、首に巻いているタオルにそっと触れた。


クラスのテントに行っている間に始まりそうだったから、他クラスのテントの横のほうでいっくんと並んで騎馬戦を観戦する。



「廉はやっぱり上なんだね」

「廉が土台になってだれかを支えるのは想像できない」

「ははっ、僕にも想像できないよ」


お互い廉に対するイメージは同じ。

わたしたちはそれくらい一緒にいた。


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