好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



どうしてなのかはわからない。

けど、いま考えればあのときの行動は、廉への当てつけなのかもしれない。


廉がたくさんの女の子に囲まれて触られてたから。

わたしをひとりにしたから。

あのときのわたしは、少しだけイラついていたから。


わかんない。
それが理由かなんてわかんないけど。


たくさんある理由のうちの、ひとつだとは思うんだ。




「いっくん、好きだよ」

「うん」

「本当に、好き」

「うん」

「大好き」

「うん」


いっくんが大好き。

ずっとずっと追いかけてきた。


いっくんが大好きで、いっくんに振り向いてほしかった。

好きな人に、好きになってもらいたかった。




「いちばん、大好き“だった”よ」



不思議だね。

あんなに好きだったのに、わたしの恋は叶わなかったのに。




「僕も、大好き“だった”よ」



穏やかに笑いあえるなんて……。


< 238 / 347 >

この作品をシェア

pagetop