好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「あ、迎えが来たよ。僕はもう行くね」
「うん。またね」
「うん」
いっくんが笑顔で手を振る。
わたしも笑顔で手を振り返すのを見てから、完全に背を向けた。
つけていたヘアクリップを外してポケットにしまう。
もう、おしまい。
この恋も、執着も、いままでのわたしも。
「っ、胡桃!」
名前を呼ばれて、ゆっくりと振り返る。
息を切らした廉は、さっきの騎馬戦で大将のハチマキを取ってもクールにすかしていた廉とは大違い。
リレーのあとでも、息を切らしてなかったのにね。
「廉、クラスのテントに行くから肩貸して」
にこっと微笑めば、廉の視線は横にずれて、すぐにふっと笑った。
わたしの目の前まで来ると手を差し出す。
その手に自分の手を重ねると、ぎゅっと握られた。
「また担いでやろうか」
「それはやめて」
「足に負担かかるほうが嫌だろ」
「……おんぶがギリ」