好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
べつにそこを掘り下げるつもりはないから軽く流す。
それよりも、なんだか気恥ずかしいというか、むずがゆいというか……。
「なぁ」
「……ん?」
「俺、勝った」
「うん」
「樹に勝った」
「そうだね」
廉が長く息を吐く。
校長の講評を右から左に聞き流しながら、隣の廉に視線を移した。
まっすぐ前を向いている廉の横顔は、心の底から喜びを嚙みしめているように見える。
うれしそう……。
「初めて勝った、やっと……」
膝の上で拳を握りしめている廉。
その拳は少し震えていた。
そこまで喜んでいる廉は見たことがない。
だから正直驚いている。
いっくんも廉に負い目を感じていたけど、余裕ぶってる廉も実はいっくんに負い目を感じていたのかな。
性格も正反対、と思っていたけど似てる部分もある。
やっぱりふたりは兄弟なんだね。