好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「廉、速かったもんね。たしかに最後いっくんを抜いちゃうのすごかったよ」
「それだけじゃない」
「え?」
横顔しか見えなかったのに、廉がこちらを向いて正面から向かい合う。
真剣な瞳に、ドクッと心臓が音を立てた。
「胡桃が、初めて俺を。あいつより先に俺を……」
「わぁああ!!」
「すごいね!!!」
「やった!!!」
廉をじっと見つめていたのに、いきなりの歓声でびっくりして廉から意識が逸れた。
そのせいで廉がなにを言ったのかわからなかった。
グランドを見れば、わたしたちのクラスが盛り上がっている。
総合優勝したんだ。
最後のリレー決勝で勝ったから。
「廉の大活躍のおかげだね」
「そんなことはどうでもいい」
視線をまた廉に戻せば真剣な表情。
素っ気ない言葉だけど、それ以上にわたしに向ける視線が熱い。
「れ、ん……?」
ドキドキと心臓がうるさい。
ねぇ、なんで廉に対してこんなに心臓が音を立てるの?