好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
そういうわけじゃないじゃん。
いじわるな聞き方だ。
1年生の体育祭の打ち上げは一生のうち今日だけだから、せっかく誘われたんならって思っただけなのに。
「破んない。帰ろ」
廉がいいならいいけどさ。
わたしが悪いみたいな言い方はやめてよね。
むすっとして廉を見れば、なぜか廉は小さくだけど笑った。
なんで。
不意打ちでドキッとしたけど、悟られないように顔を逸らす。
立ち上がりリュックを背負う。
「腕、つかめば」
「大丈夫」
「つかめよ」
断るも命令形に言い直される。
ここでまた断れば、廉が拗ねることは容易に想像ができたから、わたしが折れてあげるよ。
廉の腕につかまれば、またふっと笑いゆっくりと歩き出した。
「くるたん、またね」
「うん。かほちん今日はごめんね」
「いいよいいよ。それより、」
かほちんがわたしの耳に口を寄せた。
「話、聞かせてね」
「へ?」