好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
かほちんの言葉が理解できなくて間抜けな声が出た。
わたしの顔を見たかほちんはニヤッと笑っている。
「かほちん、どういう……」
「行くぞ」
「ちょっ……」
「じゃね」
わからないから直接聞こうとしたけど、廉がわたしを引っ張って邪魔をしてくる。
それなのに、かほちんは嫌な顔せずに手を振ってくれた。
優しい友達でよかった。
「廉、優しいかほちんに感謝してよ。怒鳴られても仕方ないのに」
「ちゃんと約束してんのは俺だから」
「臨機応変ってあるじゃん?」
「知るか」
なんだか、廉が『約束』って協調するけど、そんなに義理堅いような人だっけ?
約束はぜったいに守る。
みたいな、そんなふうに思ったことないけど、廉はそういうタイプなんだ。
わたしの知らない廉がまだまだあるんだな……。
「……もう少し速くても大丈夫だよ」
「んなわけあるか。胡桃はどんくさいから」
「そんなことないし」
失礼しちゃう。
結局、廉の腕につかまりながらゆっくりペースで廊下を歩いた。