好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
顔を上げたら真剣な表情の廉と視線がぶつかる。
最近の廉はおかしい。
今日の廉は特におかしい。
「れ……」
「廉くん!!」
わたしよりも先に廉の名前が呼ばれた。
かわいらしい高めの声。
初めて聞く声。
わたし以外に、女子で廉の名前を呼ぶ人は知らない。
だれ……?
声の主を探そうとする前に、その人は出てきた。
背を預けていた校門から離してわたしたちの前に立つ。
「ずっと待ってたよ、廉くん」
艶のある綺麗な黒髪のショートカットが特徴のかわいい女の子。
やっぱり見たことはない。
でも、大きなクリクリの瞳が廉へ好意を向けていることはわかる。
わたしなんて視界に入っていないみたいに、まっすぐに廉だけを見ている。
「なんでここにいんの?」
「だから、廉くんを待ってたんだって。体育祭見てたよ」
「そう」
「もう、相変わらず素っ気ないんだから」
えっとー、その子はだれ?
親しそうだけど、わたし以外の女の子との関わりなんて知らないよ。