好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
小さくつぶやいて歩き出す。
でも、すぐに廉が再びわたしの手首をつかんだ。
「一緒に、だろ」
「っ、」
そう言った廉だけど、わたしの手をつかんでいないほうの腕を奈子ちゃんがしっかりホールドしてる。
あぁ……やだな……。
素直に、そんな感情が湧き上がってきた。
廉越しに奈子ちゃんが見える。
かわいらしい顔だけど、その奥に潜む真っ黒い感情をわたしは知っている。
まるで自分を見ているように感じた。
奈子ちゃんの気持ちはすごくわかるけど、いまは応援できるものでも、無視できるものでもない……。
恋ってどうしてこんなに難しいんだろう。
どうしても、廉を見ると奈子ちゃんも見えるからまっすぐに前を向く。
足はまだ痛いけど、それ以上に胸の奥のほうがキリキリと痛む。
だから足の痛みは無視して早歩きで家に向かった。
「胡桃っ」
「廉くん速いよ」