好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「どうしたの?」
「っ、なんでもないよ」
「廉は?」
「……知らない」
「またケンカしたの?」
ケンカ、とは違う。
そんなことよりも、もっとやっかいだと思う。
首を横に振る。
「捻挫してるのに走ったらだめでしょ。同じ場所ひねったんじゃない?」
「……うん」
「ほら、肩つかまって。いまはいいでしょ?」
一度、わたしがいっくんに触れることを拒んだから気にしてくれているんだ。
自業自得だけど、痛みは増してジンジンしている。
ここはいっくんに甘えよう。
「ありがとう」
「いいよ。クラスで打ち上げなんだけど、時間あるからいったん家に帰るし」
「いっくんのクラスも打ち上げあるんだ。やっぱりわたしも参加しようかな」
結局、廉と帰ることできてないし。
そう思いながらいっくんの肩に手を伸ばす。
「ばか、胡桃」
「え……」
「はぁ、はぁー……まじでばか……」
いきなり聞こえた声に、顔だけ振り向く。