好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
そこには息を切らした廉がいて、わたしの伸ばした手を自分の首に回させそのまま背中におぶる。
「え、ちょ……」
「樹はあいつと一緒に帰れ」
顎でクイっと後ろを示す廉。
いっくんは視線をそちらに向け苦笑いを浮かべた。
「そういえば、奈子ちゃん来るって言ってたね」
「知るか。邪魔すんなって言っとけ」
「ほんとくるちゃん以外には雑だね」
いっくんの言葉に返事をせずにわたしをおぶったまま歩き出す廉。
う、心臓が痛い。
バクバクと破裂しそうな勢いで脈打っている。
「まじでばか。胡桃のあほ」
「なんでよ……」
「約束破んな」
「先に破ったのは廉でしょ。ふたりじゃなかった」
「あいつが勝手にいただけだろ」
「でも廉のせいじゃん」
「胡桃だって、樹といただろ。しかもなんであいつの前で転びそうになってんだよ」
見てたんだ。
息切らしてたし、走って追いかけたんだ。
でも、息切れるほど走らないといけない距離、あいてたってことじゃん。