好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



「奈子ちゃんかわいいね」

「話逸らすなよ。胡桃はやっぱり樹がいいわけ?」

「…………だったら廉におぶられてないよ」

「は?なんて言った?」


顔をこちらに向ける廉。

横顔しか見えないけど、半分だけで怪訝な顔をしていることはわかる。



「ねぇ、廉」

「なに」

「わたし、いちばんじゃないといやだよ」

「は?」



ぜったいにいちばんがいいんだ。

廉のいちばんはわたしじゃないといやなんだ。



これは、なんていう感情?



「胡桃」

「なに」

「ついたぞ」

「うん」

「中、入る」

「いいよ」


廉が玄関を開けて、わたしを下ろす。

わたしが靴を脱ぐより先に、廉が靴を脱いで上がっていた。


「ほら、部屋連れてく」

「先に手洗いうがい」

「じゃあ洗面所連れてく」


もう大丈夫なのに、廉はまたおんぶをしてわたしを洗面所に連れて行ってくれた。

伝えなくても当然のように各部屋を把握している。


幼なじみだから。




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