好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
でも、仕方ない。
恋ってきっと、そういうものなんだ。
「廉が好きだよ」
廉の口を押さえていた両手を離して、にこっと笑う。
ちょっと、いや、かなり照れくさいけど。
体育祭でも廉のことかっこよく見えた。
気がつけばいっくんじゃなくて、廉ばかり見ていて、廉だけを応援していた。
いつからか、いつの間にか。
ううん、いつでもいいや。
いまのわたしは、廉が好き。
「っー……」
「泣いちゃう?」
「うっせぇ。おせぇんだよ」
「素直になれって廉が言ったんじゃん」
「あーもう、長すぎ。待ちくたびれた」
「そこまで長くしゃべってなかったでしょ」
「なげぇよ。10年以上経ってやっとだよ……」
「え?」
廉がわたしの後頭部に手を回して引き寄せる。
優しくて温かい手は少しだけ震えているように感じた。
それはきっと、気のせいじゃない。
「まじで遅い。あほ胡桃」