好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
アルバムを横に置き、たまらなく愛おしく感じた背中に抱きつく。
「……素直じゃないね」
このときの廉はずっといじわるばかりだったもん。
だから、わたしのこと好きだなんて思わなかった。
廉がわたしにいじわるをして、わたしは泣かされてばかりで、そんなわたしに優しくしてくれるいっくんに恋をしたんだもん。
「……どうすればいいかわかんなかったんだよ」
好きな子にいじわるしちゃうなんて、子どもだね。
わたしは大人だから、仕方なく許してあげるけど。
「ねぇ、こっち向いて」
抱きついた手をゆるめる。
それを合図に、素直に廉が寝返りをうってこちらを向いた。
寝転んで向き合う形。
「これからは、ただわたしを見て、抱き締めてよ」
それだけでいいから。
微笑めば、廉は小さく息を吐き、わたしに手を伸ばし抱き寄せた。
「胡桃しか見たことない」
「じゃあ、もっとぎゅっとして」
「ほんと、かなわねぇ……」
ぎゅっと強く抱きしめてくれる廉の腕の中は心地よくて、そのまま眠りについた。
こんなに幸せな気持ちがあふれる夜は初めてだった。