好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
◇その優しさはずるい
「廉くんは奈子のだもん」
どうしても朝、いちごみるくを飲みたくなってコンビニに行こうと家を出ると、廉の家から出てきた奈子ちゃんにばったり。
わたしたちを見るなり、目の前まで来てそんなセリフを吐かれたのだ。
「なに言ってんだお前」
それに対して怪訝な顔で、奈子ちゃんを見る廉は本当に鈍い。
廉って自分に向けられる好意に気づかないよね。
「奈子のほうがずっと前から……」
俯きがちにつぶやいた声は震えている。
昨日からずっと考えていたのかな。
わかるよ。
本当にその気持ち、わかる。
わたしもそうだったから。
奈子ちゃんからしたらぽっと出のわたしなんてむかつくよね。
逆の立場になると難しい。
だけど、わたしだって譲れないこともある。
わたしはどうしてほしかったかな?
なんて言ってほしかったかな?
「それでも、負けない」
けっきょく、なにを言ってもむかつくんだろう。
だから、わたしはわたしの素直な気持ちを。
あのときのわたしは、同等に見られていないこと、同じラインにいないことがいやだったから。