好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「くるちゃん、おはよう」
いっくんが出てきてすぐに挨拶をしてくれる。
顔を向けると、すごくニコニコしていた。
「いっくんおはよう」
「ふたりとも、おめでとう」
「あ、ありがとう」
祝福の言葉に照れて、頬が熱くなる。
もういっくんを見ても、胸の痛みなんて感じない。
不思議だね。
「行くぞ」
「え、あ……」
「いいよ。これからはふたりで行きなよ」
「う、うん」
「あと、ストレートもかわいいね」
わたしの肩に回した手に力を込める廉。
無理やり押すようにして歩き出すから、顔だけいっくんに向けた。
「ありがとう!じゃあね」
手を振るわたしに、いっくんも笑顔で振り返してくれたことを確認してから前を向く。
肩に回された手は力強い。
「ちょっと廉」
「……俺のためだっつの」
「え?」
「胡桃もあいつに褒められて喜んでんなよ」
わたしから手を離して、立ち止まると正面に回り込まれた。