好きな人には好きになってもらいたいじゃん。


そんな話をしながら、いつものように過ごす。

なにかと廉がわたしの席に来たりもしたけど、変わらない生活。


でも、やっぱり景色が違って見えた。




「俺部活だけど一緒に帰ろ」

「待っといてってこと?」

「胡桃も部活ある日だろ?」

「なんで知ってるの」

「じゃあ、あとで」


まだ返事してないのに、軽く手を振って行ってしまう。

ほんと、そういうとこは強引だ。


べつに断らないけど。

でも、それをわかっていて返事を聞いていないような気もするから、なんだか負けた気分になる。



わたしもリュックを背負って、家庭科室へ移動する。

今日は編み物をする予定。

この前はコースターを作ったから、今日は大きくして鍋敷きにしようかな。


頭の中でイメージしながら家庭科室へ行き、いつもの席へ座るとさっそく始める。



「胡桃ちゃん、ここいい?」


その声に顔を上げると姫野先輩がいた。

なんだか久しぶりな気がする。


ここ最近は姫野先輩どころじゃなかったから。


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