好きな人には好きになってもらいたいじゃん。

「はい、どうぞ」

「ありがとう」


お礼を言いながらわたしの前の椅子を引いて座る。

正面で向かい合うけど、この前より顔が見れた。

前は正直見たくもなかったけど。



「胡桃ちゃん、足は大丈夫?」

「はい。もう大丈夫ですよ」

「それならよかった。見てて心配してたんだ」


たしかにみんなの前で転んだから、もちろん姫野先輩も見ている。

しかも同じ競技に出ていたから近くで見ていたんだろう。



「あのときの、折原くんの弟くん、かっこよかったね」

「そうですね」

「もしかして、なんだけど折原くんの弟くんと……」

「はい、付き合うことになりました」

「やっぱりそうなんだ。今日、2年の間でも話題になってたんだ」

「そうなんですね、廉目立つから……」


文化祭から人気に火がついたもん。

先輩の間で話題になるって相当だね。


きっと廉本人は気づいてないけど。



「弟くんもだけど、胡桃ちゃんも、すごく人気だから。そんな2年でも人気あるふたりが手を繋いでたって聞いて」


< 305 / 347 >

この作品をシェア

pagetop