好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
お礼を言いながらわたしの前の椅子を引いて座る。
正面で向かい合うけど、この前より顔が見れた。
前は正直見たくもなかったけど。
「胡桃ちゃん、足は大丈夫?」
「はい。もう大丈夫ですよ」
「それならよかった。見てて心配してたんだ」
たしかにみんなの前で転んだから、もちろん姫野先輩も見ている。
しかも同じ競技に出ていたから近くで見ていたんだろう。
「あのときの、折原くんの弟くん、かっこよかったね」
「そうですね」
「もしかして、なんだけど折原くんの弟くんと……」
「はい、付き合うことになりました」
「やっぱりそうなんだ。今日、2年の間でも話題になってたんだ」
「そうなんですね、廉目立つから……」
文化祭から人気に火がついたもん。
先輩の間で話題になるって相当だね。
きっと廉本人は気づいてないけど。
「弟くんもだけど、胡桃ちゃんも、すごく人気だから。そんな2年でも人気あるふたりが手を繋いでたって聞いて」