好きな人には好きになってもらいたいじゃん。


ニコニコしている姫野先輩。

わたしはチラッと見てからすぐに視線を手元に移す。


「恥ずかしいですね」


誤魔化すように鍋敷きを編んでいく。

恥ずかしいのは事実。


あと、気をつかわせてわたしまで人気って言ってもらったのが申し訳ない気持ちもあった。



「わたし、いっくんのことが好きでした」

「え?」

「小さいころからずっと、いっくんだけが大好きだったんです。だから、高校入学して姫野先輩の存在知ったときは、すごくむかつきました」

「……そう、なんだね」

「姫野先輩と付き合うことになったときもすごく泣きました。姫野先輩のこと、きらいでした」


わたしのはっきりとした物言いに、気まずそうにする姫野先輩。

べつにいい。

ちょっとくらい困らせたいんだもん。


八つ当たりだけど、わたしが悩んだ分、ちょっとくらいいじわる言わせてよ。



「すんごくきらいでした。それなのに仲良くしたいって正気かって」

「ご、ごめんなさい……って謝られても、むかつくよね。えっと……」


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