好きな人には好きになってもらいたいじゃん。

姫野先輩と話しながら編み物を作り、サッカー部が終わるころに一緒にグランドへ行った。



「折原くん、お疲れ様」


ちょうどいっくんの姿を見つけた姫野先輩がすぐに声をかける。


「姫野さん。お疲れ。あれ、くるちゃんといたの?」

「うん」

「なんかうれしそうだね」


言いながらわたしに視線を移したいっくんに、わたしも笑顔で頷く。



「あ、じゃあみんなでご飯行く?けっきょく行けてなかったし」


その誘いに、いやな気がしなくなっていたのはやっぱり気持ちの変化があったから。

前、同じような状況になったときはぜったいに行きたくなかった。


だけど、いまはべつにいいかなって思えるくらいになっている。


そんないまの自分が、きらいじゃない。
むしろ好き。



「胡桃、帰んぞ」

「え?はや」

「いまからご飯行こうかなって思うけど、廉も……」

「ふたりで行っとけ」

「ちょっと廉、言い方」

「いいよ、胡桃ちゃん。また今度行こう。ふたり仲良くね」


廉の失礼な態度にも変わらない対応をする。

姫野先輩って大人だ。

客観的に見ると、そう思えた。


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