好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「廉、入るね」
ドキッとした。
まさか来るとは思ってなかった。
声だけでだれかなんてすぐにわかるし、来てくれたことに頬がゆるむ。
「おう」
返事をすると、ドアをゆっくり開けて入ってきた胡桃。
パーカーに短パンの胡桃は一度家に寄ってきたらしい。
手には鍋……。
「大丈夫?」
「うん」
「雑炊、作った」
「うん」
「食べる?」
「……うん」
「なに、いまの間!」
俺の様子をうかがっていた胡桃だけど、大きな声を出す。
わざとらしく頬を膨らませて拗ねた表情でベッドの横に来る。
「いらないならいい」
「食べるよ」
胡桃は料理下手だけど。
でも、下手だけどがんばってるのはわかる。
気持ちがこもっているのはわかる。
下手だけど。
手をつき体を起こす。
そんな俺の膝の上に胡桃は躊躇なくお盆を置いた。
こういう少し強引な胡桃が好きだ。