好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
そんなかほちんをわたしも見る。
「ねぇ、さっきのはどうだった?」
「あたしが男なら惚れてるわ」
「ほんとに?」
「くるたんはかわいいもん」
「かほちん、大好き!」
こんなふうに言ってくれるかほちんが素直にうれしい。
「かわいい」って言葉は魔法の言葉だ。
本当にかわいくなれる気がする。
もっとかわいくなろうって思える。
いっくんも言ってくれるけど、それが恋愛に結びついてくれない。
どうにか、いっくんの気持ちをわたしに向けたい。
そう思い続けて10年近く。
いまが最大のがんばりどころになっている。
ここで、この長年の片想いをどうにか実らせたいところだ。
昼休みも終わり、午後の授業を受ける。
考えるのはいっくんのこと。
かわいくなる方法や男の子がきゅんとくる仕草とかは、雑誌にたくさん書いてあった。
だけど、確実に好きな人に好きになってもらえる方法は書いていない。
それでもわたしは、諦めるわけにはいかないんだ。