好きな人には好きになってもらいたいじゃん。

「廉、」

「……かわい」

「っえ、」

「行くぞ」


耳元で囁かれたと思えば、手首を掴んだ手を離して繋ぎ直される。

指を絡めて繋ぎそのまま歩き出した。


……心臓、もつかな。



「まず映画だっけ?」

「う、うん」


歩きながらわたしを見る廉の気配がしたけど、まっすぐ向いたまま顔を動かさない。

廉のせいだよ。



「ふっ、」

「なに?」


あからさまに声を出して笑った廉に、すぐに顔を上げて見た。

だって、笑われたって感じだったもん。



「意識しすぎ」

「そ、んなことはないけど」

「けど」

「ないよ」

「ふぅん。まぁいいけど」


余裕の笑みを浮かべる廉にむっとする。

わたしばっかりじゃん……。


でも、まだはじまったばかり。

こうなったらわたしだって、廉をいっぱいドキドキさせるから。



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