好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
いっくんががんばっている姿を夢中で見ていると、時間はあっという間にたち、サッカー部が円陣を組んでいた。
練習終わりにいつもしている。
もうそんな時間か……。
なにひとつ進まなかった課題を片づける。
リュックに詰め込んで、椅子から立ち上がり背負ってから図書室を出た。
そしてグランドに向かう。
「あ、くるちゃん」
グランドに近づいてきたときに、後ろから声をかけられた。
突然の声に驚いて勢いよく振り返る。
そこには練習着姿で、髪から水滴を垂らして首にタオルをかけているいっくんがいた。
爽やかな笑顔のいっくんがやっぱりかっこいい。
会えてよかった。
ドキドキしながらも、平静を装い笑顔を浮かべる。
「こんな時間までどうしたの?」
「図書室で勉強してて」
ほんとはいっくんを見てて、勉強なんてできてないけどね。
そんなわたしにいっくんは、ゆっくりと頭に手を伸ばしてきて優しく撫でてくれた。