好きな人には好きになってもらいたいじゃん。


くるちゃんのあそこまで意識してる表情、僕には引き出せなかった。

憶病になって逃げてばかりだった僕。


だけどいまは、心からふたりの幸せを願うことができるよ。




「折原くん?」

「あ、ごめん。ちょっと考え事してた」

「胡桃ちゃんと弟くん?」


僕たちの前で言い合いしながらも仲良く並んで歩いているふたりに視線を向けた姫野さん。

それに小さく頷く。



「ふたりには幸せになってほしい」

「もう幸せだと思うよ」

「そっか」

「私も幸せだよ」


姫野さんを見ればにこっとやわらかい笑顔を向けてくれる。

…そうだね。


ちょっとだけ、寂しい気持ちもあったけど、僕は僕でまた幸せを見つけてるよ。


叶わなかった初恋。
敵わなかった初恋。


今度の僕は、もう逃げないよ。

ふたりみたいに、まっすぐに向き合っていく。




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