好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「くるちゃんは偉いね」
にこやかに褒めてくれるいっくんがうれしいけど、少しだけ申し訳なくも思った。
「いっくんは部活お疲れ様!」
だから明るく、いっくんに話を変える。
会えただけじゃ帰れない。
一緒に帰りたいからここに来たんだもん。
「ありがとう」
「すごくびっしょりだね」
「暑くて頭から水かぶってきた」
「風邪ひかないでよ」
いっくんに手を伸ばし、首にかかるタオルでいっくんの髪を拭く。
わたしより背の高いいっくんと、顔が近づく。
ドキドキしてくれてるかな?
わたしはすごく、ドキドキしているよ。
「くるちゃんありがとう」
だけど、いっくんは少しかがんで、いつも通りの笑顔でわたしにお礼を言うだけ。
ドキドキが止まらない。
なのに、どうしていっくんはいつも通りでいられるの?
いま、こんなに近いのに。
いっくんに触れているというのに。