好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



いっくんの隣を歩くだけでつい頬が緩んでしまう。

廉からは鋭い視線を向けられているけど、そんなの痛くもかゆくもない。

元はといえば、廉が間に入ってきたのが悪いんだもん。


いっくんに気づかれないように、廉に向かってあっかんべをする。



「いっくんは委員会とか入ってるの?」

「僕は文化委員だよ。去年もやったから、今年もしてみた」

「そうなんだ。じゃあ、わたしも文化委員にしようかな」

「忙しいのは文化祭前だけだからいいよ」

「文化祭は楽しそう!いっくんいるから、立候補しよーっと」

「くるちゃんはかわいいね」



わたしの言葉にいっくんはにこっと微笑んでくれる。

さらっと「かわいい」なんて言ってしまういっくんだけど知ってるんだ。


そのかわいいは恋愛感情ではない、ハムスターを見て言う「かわいい」と同じだって。



でも、知ってるからこそ振り向いてもらうために美容に気をつかったり髪型を変えたりしてかわいくしている。

かわいいって思ってもらえるように、自分でもあざといなって思うこともする。




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