好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



わたしのわからない話をしないでよ。



本当ならいまごろ、わたしはいっくんと並んで歩いていたはずなのに。

どこに食べに行く?とか話しながら、隣で笑っていたはずなのに……。



わたしのことは蚊帳の外で、ふたりは顔を見合わせて楽しそうに話している。


……どうしていっくんは、そんなに無邪気に笑うんだろう?


わたしの前じゃしない笑顔。

わたしが向けられたことのない笑顔。


わたしのほうがずっといっくんと長くいて、ずっといっくんのことを知っていると思っていた。


わたしが知らないいっくんなんて、いるはずがない。


ないのに……。




「姫野さんはどうしてくるちゃんを知っているの?」

「部活が同じだよ。かわいくて仲良くなりたいって思ってたら、まさか折原くんの幼なじみなんてびっくり」

「僕のほうこそびっくりした。ふたりにそんな繋がりがあったなんて」



わたしの話題だけど、その中にわたしは入っていない。




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